私は、光学活性スルホキシド(1)に塩基を作用させた後、各種、非対称ケトンとの反応を行なった時のジアステレオ選択性について検討を行なった。その結果、考え得る4つの生成物のうち、実際に得られたのは2つだけであった。 生成物の構造は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離精製後、H-H NOESYを測定して推定した。メチル イソプロピル ケトンを用いた場合を例にとると、下図に示すプロトン間にNOEが観測された。さらに3aの構造がX線結晶構造解析から決まり、同時に2aの構造が決定した。この時の2aと3aの生成比は28:72(NMR)で、収率はそれぞれ、15%、63%であった。 イソブチロフェノンの場合には2a、3aに相当する配位をもつ2b、3bの生成比が78:22(NMR)となり、先の例とは違った選択性が得られたが、共通して硫黄原子に隣接するメチン炭素のまわりの立体配位はRであることがわかった。他のケトンでも同様の検討を行なったが生成物の分離が極めて困難であり、今尚、構造決定が為されないままとなっている。しかしながら、生成物は2つだけであり、ジアステレオ選択性という点では大変優れた反応ということができるが、物質の単離という立場では応用性に乏しいという結論に帰着した。
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