研究概要 |
2-アゼチジノン(1)の陽極酸化反応はその4位にアセトキシ基やアルコキシ基を直接導入することが出来るため、注目されている。しかし、1の酸化電位は極めて高く、その電極反応の収率や電流効率も低い。これに対し、著者らは、1の4位にシリル基を導入することにより0.4V以上の電位の低下及び収率や電流効率の著しい改善を実現し、さらにこの電極アセトキシ化やアルコキシ化反応が1 の4位で位置特異的に進行することを既に明らかにしている。今回、この陽極酸化反応の合成化学的な有用性をさらに増大させることを目的として基質である4-トリメチルシリル-2-アゼチジノン(2)の簡便な合成法等について検討し、以下の新規な知見を得た。 1.極めて安定で取り扱い易い三員環ケトンであるcis-2,3-ビス(トリメチルシリル)-1-シクロプロパノンに触媒量のアジ化ナトリウムと15-crown-5の存在下、トリメチルシリルアジドを作用させると容易にcis-1,3,4-トリス(トリメチルシレル)-2-アゼチジノン(3)が高収率(85%)で得られる。3は、希塩酸処理の後、Bu_4NFを作用させることにより定量的に2へ変換することができる。従って、2の極めて簡便で効率の良い合成法を確立することができた。 2.三つのシリル基を有する2-アゼチジノン3は、アルデヒドとのPeterson反応の後、陽極酸化すると、アスパレノマイシン等の合成中間体である4-アセトキシ-3-アルキリデン-2-アゼチジノンに容易に変換できる。従って、この新規な化合物3がbeta-ラクタム系抗生物質の極めて有用な合成素子となることが明らかとなった。
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