酸化剤potassium peroxomonosulfate(KHSO_5)は、アセトンの存在下、ジメチルジオキシランを中間体としてオレフィンをエポキシ化する。この反応においてアセトン以外のケトンを用いれば立体選択的なエポキシ化を行うことが出来ると考えられる。しかし、アセトン以外のケトンを用いたエポキシ化の報告は少なく、ケトンの構造とエポキシ化の関係については不明な点が多い、そこでこの点を明らかにし、立体選択的なエポキシ化を検討した。以下、研究成果を示す。 (1)種々の構造のケトンより生成するジオキシランの構造と反応性の関係を明らかにする。 通常の条件である中性条件では、立体障害のあるケトンではジオキシランによるエポキシ化が進行しにくいことがわかった。そこで、様々な構造のケトンより生成するジオキシランが効率良くオレフィンをエポキシ化する反応条件の検討を行なった。その結果、ケトンとKHSO_5(OXONE)とを用いて、相関移動触媒存在下、塩化メチレン-メタノール-緩衝液系溶媒、pH11の条件で、ジオキシランを生成させると、種々の構造のケトン由来のジオキシランでオレフィンのエポキシ化が効率的に進行することを見いだした。 (2)オレフィンの立体選択的エポキシ化を検討する。 2位、6位に置換基を有するシクロヘキサノン由来のジオキシランを用いて、立体選択的エポキシ化を検討した。オレフィンとしては、シクロヘキサノール類、シクロヘキセン類を用いた。その結果、上記の条件でエポキシ化を行ったところ、シクロヘキセノール、1.3-ジメチルシクロヘキセン等で高いトランス選択性でエポキシ化が達成することを見いだした。また、嵩高いケトンほどよい選択性を示すことが明かとなった。
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