1.エクソサイトーシスにおいて重要な役割を果たしている細胞内のCa濃度を細胞質領域と核領域に分けて測定した。1個の細胞内Ca濃度の測定は、Ca濃度感受性蛍光色素Fluo-3を用い、画像処理装置付きの蛍光顕微鏡及び共焦点レーザー顕微鏡を使って観察した。 (1)細胞内Ca濃度の振動:0.1mug/mlのcompound48/80で刺激したラット腹腔肥満細胞の細胞質と核質の両方でCa濃度の振動が観察された。 (2)細胞内Ca濃度の一過性の上昇:1mug/mlのcompound48/80では、Ca濃度振動は観察されず、一過性のCa濃度上昇のみが観察された。このことは細胞質と核質の両方で観察されたが、核質のCa濃度の方が細胞質より高くなった。 2.エクソサイトーシスと細胞内Ca濃度の上昇をそれぞれキナクリンとCa感受性蛍光色素を用いて同時に測定した。 (1)細胞内Ca濃度振動とエクソサイトーシスの関係:細胞内Ca濃度振動は見られたがエクソサイトーシスに伴うキナクリンの蛍光の減少は見られなかった。従って、Ca濃度振動とエクソサイトーシスには相関がないことがわかった。 (2)細胞内Ca濃度の一過性の上昇:一過性のCa濃度上昇の後にエクソサイトーシスによるキナクリンの蛍光の減少が観察された。Ca濃度の上昇以前にエクサイトーシスがおこることはなかった。 3.エクサイトーシスに対する外液Ca濃度の影響 細胞外のCaをEOTAでキレートして、細胞外のfree Ca濃度を低くしても細胞内の一過性Ca濃度上昇はおこり、かつエクソサイトーシスも観察された。 以上のことより、エクソサイトーシスは細胞内Ca濃度振動とは関係なく、一過性のCa濃度上昇と相関がること。そしてその一過性のCa濃度上昇は細胞内のCaストアからのCaだけでもおこり、かつエクソサイトーシスを惹起するに十分であることが明かとなった。
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