我々は以前、ハプテン特異的T細胞ハイブリドーマ2-45-12においてTCR/CD3複合体を介した刺激による細胞内カルシウムイオン濃度の上昇とアポトーシス誘導との間に相関があることを確認している。さらに、allo-reactiveT細胞ハイブリドーマであるS-37についてもレセプターを介した刺激による細胞内カルシウムイオン濃度の上昇とapoptosis誘導との間に相関があることを明らかにしたが、この細胞株においては2-45-12と比較してより長時間におよぶカルシウムイオン濃度上昇がdpoptosis誘導に関与していると考えられた。また、B細胞腫瘍WEHI231においては、抗原刺激および細胞内小胞体のカルシウムポンプ阻害剤であるthapsigargin刺激にともなう細胞内カルシウムシグナルとapoptosis誘導率との間に、定量的相関があることが示唆された。 現時点では、細胞内情報伝達においてカルシウムイオンのみを特異的に抑制することが困難である。我々は、抗原刺激時に、細胞の核においてもカルシウムイオン濃度は上昇することを確認しており、核内のカルシウムイオンが転写調節に何らかの形で関与していることを予想しているが、このことを追求するため、核膜に対するモノクローナル抗体を調製し、核内でのカルシウムイオン濃度上昇に関与する因子の検索を行おうと考えた。数種類の抗体産生ハイブリドーマの作製に成功し、抗体を細胞内にマイクロインジェクションすることによりその機能を検討中である。また、同一のレセプターを介した刺激であっても、刺激に用いる抗体の種類などにより、細胞応答が全く異なる場合が見いだされ、細胞に対する刺激の定量化の重要性が示された。これに関し、現在レセプターの架橋に影響すると予想されるいくつかの因子を定量的に変化させる系を準備中である。
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