研究概要 |
以前より,海洋生物由来のペプチドの取る立体コンフォメーションとその生理活性との相関性を解明する為,アメフラシやホヤから単離精製される一連の環状ペプチドの立体構造について研究している.特に,分子内2回対称を持つユリチアサイクラマイド及びアシジアサイクラマイドに関してX線結晶構造解析,HMRによる溶液構造解析,分子動力学計算等の手法を駆使し研究を進めるとともに,その立体構造と活性との相関性について検討してきた.今年度は,これら一連の環状ペプチドのうち分子内2回対称からわずかにずれているパテラマイドAを文献に従い化学合成し,結晶化を行ったところ晶系の異なる2種類の結晶が得られた,又アシジアサイクラマイドに関しても以前に報告しているものとは異なった結晶が得られた.これらのX線結晶構造解析及びこれまでの研究結果から,ユリチアサイクラマイド,アシジアサイクラマイド,パテラマイドAの立体構造は,C2対称で関係づけられるコンフォメーションを取ることを明らかにした.一方,化学構造が2回対称から大きくずれているパテラマイドDの立体構造が非対称のコンフォメーションを取ると報告されていることから,これら一連の環状ペプチドが取る立体コンフォメーションの差異と殺細胞活性との間には強い相関性が考えられるとともに,分子内対称構造からのずれがこれらの化合物の活性型コンフォメーションの形成に大きく関与している可能性を示唆した.
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