小腸からの吸収挙動の解析 薬物としてメチオニンエンケファリンの安定化誘導体であるメトケファミド(MKA)を用い、その溶液をラット空腸上部に投与した後、空腸支配血管を潅流することによって管腔内からの消失と血管側への出現を同時に測定した。得られた値より、投与量に対する消失量と血管側回収量との差を求め、MKAの小腸粘膜透過性と粘膜での分解(代謝)を定量的に評価した。MKAは、空腸管腔内で投与後30分間に60-80%が分解され、この時投与量の0.3-1.2%が血管潅流液中に回収され、経口投与後のbioavailailityは非常に低いことが示された。血管側回収率は、投与溶液のMKA濃度の増大とともに上昇し、これは、粘膜透過時の代謝過程に飽和が生じたためと考えられた。MKAなどのエンケファリン類は、主にアミノペプチダーゼによって分解されることが報告されているため。その阻害剤であるプロマイシンを同時に投与したところ、管腔内での分解が40%程度にまで抑えられるとともに、血管側への吸収率は4%程度にまで上昇した。さらに、小腸上部に比べて代謝活性が低いと考えられる回腸を用いて同様の検討を行ったところ、血管側への吸収率は空腸の約2倍程度であった。以上の結果より、エンケファリン経口投与後のbioavailabilityを改善する方法として、代謝阻害剤の利用及び小腸下部へのtargetingが有効であることが明らかとなった。 吸収後の初回通過代謝の検討 ラット肝潅流法を用いて、MKAを門脈内に投与した時の肝臓での代謝について検討を行った。定常状態において、肝における抽出率は40-50%となり、MKAは吸収後全身血中に移行する前に、その半分近くが代謝を受けることが明らかとなった。また、投与後肝での代謝が定常に達するまでの時間は非常に短く、MKAは肝毛細血管の内皮細胞または肝細胞表面に存在する酵素によって、速やかに分解されることが示唆された。
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