ヒトalpha-ラクトアルブミンのCa^<2+>結合配列を導入した変異ニワトリリゾチーム内のSS結合を還元し、Ca^<2+>存在下、弱アルカリ性条件で、再酸化(巻き戻し)を行った。巻き戻し5分後の溶液を直ちに、弱酸性条件下で、カチオン交換樹脂を接続したHPLCにて解析した時、保持された2つのピークが現れた。遅れて溶出するピーク(II)は、還元前の変異体と同一の保持時間を持っていた。一方、早く溶出するピーク(I)は、活性が十分に回復する30分後及びCa^<2+>非存在下での巻き戻し5分後には観察されなかったので、ピークIは、Ca^<2+>が結合することで構造が保持されている巻き戻り中間体に由来するものであることが強く示唆された。この中間体の構造を決めるために、ピークIを分取した後、分取した一部を同条件で解析したところ、保持されたピークは全く現れなかった。このことは、この中間体の構造が分取中に壊れていることを示唆していた。この条件下で、予想される化学反応はSH-SS交換反応なので、SH基と速やかに反応するICH_2cONH_2を巻き戻し5分後の溶液に加え反応を止め、反応液を上述の条件で解析したところ、ピークIIのみが現れた。即ち、巻き戻し中間体はICH_2cONH_2との反応中、もしくは、反応したことによってその構造が崩れたことが予想された。以上述べたように、Ca^<2+>存在下で構造を保持している巻き戻し中間体を捕捉することができた。しかし、その構造は速やかに変化することから、現段階では構造を決定することは困難であることがわかった。この構造変化には、分子内SH-SS結合の組み替えが関与していると予想される。そこで、この変異体の4つのSS結合のうち、近接している2つのSS結合の内1組のシスチンをそれぞれアラニンにアミノ酸変異したリゾチームを調製した。この変異体が巻き戻し過程で中間体を持つかどうか現在解析している。
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