研究概要 |
リン脂質は、消化管内で酵素的に脱アシルの後、腸管細胞に吸収され、そこで再アシル化されてキロミクロンに取り込まれた後、血中には入らず、リンパ行性に吸収されることが知られている。酵素を利用するホスファチジン酸エステル類の一段階合成法を既に開発したので、種々の薬物のホスファチジル体を合成できる。5-フルオロウリジンが強い制癌活性を持ち、かつその強い紫外吸収によりHPLCを用いた体内動態解析が容易なことから、1,2-ジパルミトイル型の5′-フォスファチオジル-5-フルオロウリジン(1)を合成し、基礎検討を行なった。 1をラットに経口投与後、腸管内液、胸管リンパ液中およ血液をHPLC分析し、1または1由来の化合物を検索した。その結果、グリセロール部2-位が長鎖不飽和脂肪アシル基であるリノレオイル基またはアラキドノイル基で置換した2及び3が血中に比べて約30倍の高濃度でリンパ液中に存在することが確認された。この結果から、当初想定したように、天然リン脂質に特異的な吸収機構によって1が経口吸収されたことが示唆された。
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