研究概要 |
主要な循環型利尿ホルモンはANPとBNPであり、特にBNPは心不全などの病態時に心臓における産生・分泌の亢進することが知られている。従来、ペプチドホルモンに対する腎尿細管管腔側の機能は、酵素的分解とアミノ酸再吸収によるエネルギー回収であると考えられてきた。しかし、利尿ペプチドアナログ間で受容体レベルでの活性と利尿効果に必ずしも対応が認められないことが知られ、これら知見は腎尿細管管腔におけるペプチドの不活化がその生理作用を制御していることを強く示唆している。本研究では、ペプチド分解酵素阻害剤の作用機構解明を目的に、ANPとBNPの体循環および腎尿細管管腔における活性制御機構の解明を図った。 1)正常および心不全モデルラットを用い、利尿ペプチドの体内動態および利尿効果の速度論的解析を行った。その結果、生理的レベルのANPの体循環における動態は主にクリアランス受容体により制御を受け、高濃度領域においてはペプチド分解酵素が関与していること、またBNPの体内半減期がANPに比べ極めて長いこと、さらに腎尿細管管腔における酵素的分解がANPの不活化に関与していることを明らかにした。 2)尿細管の構造(極性)・機能的特徴を保持している培養腎上皮細胞LLC-PK_1を多孔性フィルター上に単層培養し,ANP・BNPの活性をcGMP産生を指標に評価した。その結果、利尿ペプチドに対する生物活性受容体が尿細管上皮細胞の血管側のみならず管腔側にも存在することを明らかにした。また、BNPの管腔側膜酵素による不活化はANPに比べ少ないことが認められ、この事より尿細管管腔膜に存在する受容体は、病態時においてBNPの受容体として機能すること、またペプチド分解酵素阻害剤投与時におけるANPの利尿作用に関与することが示唆された。
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