最近報告されたフルオロセレネニル化は、簡便にアルケンよりフルオロアルケンを得る合成法として注目される。この反応は^<18>F^-を原料として行うことが可能だと考えられ、これまで求核置換反応に依存してきた神経受容体測定剤等、高い比放射能を必要とするフッ素-18標識薬剤の合成に、あらたな可能性を与えるものである。実験は、核反応によって製した^<18>F^-水溶液に対イオンとなる金属塩を加え、窒素気流下加熱乾燥した。室温に冷却後、4-allylaisoleの塩化メチレン溶液を加え、ここに氷冷下ベンゼンセレネニルブロミドの塩化メチレン溶液を滴下した。反応の進行は薄層クロマトグラフィで観察した。^<18>F^-水溶液を非放射性フッ化銀と混合して得られた、担体付加Ag^<18>Fを用いた反応系では良好な収率で反応が進行した。無担体付加のAg^<18>Fは、^<18>F^-水溶液と酢酸銀を混合して製した。これを用いた[^<18>F]フルオロセレネニル化は進行しなかった。この反応は中間体であるエピセレネニウム塩に対するフッ素アニオンの攻撃で起こるとされるが、酢酸銀が共存する条件では酢酸イオンの求核攻撃が競争的に起こるためではないかと考えられる。これに対し、相間移動触媒である大環状アミノポリエーテル(APE)と炭酸カリウムよりNaked Fluorideを調製すると担体付加の場合より劣るものの、[^<18>F]フルオロセレネニル化反応は進行した。以上の実験より^<18>F^-水溶液を原料とする無担対付加[^<18>F]フルオロセレネニル化は実用的な収率で進行することが解った。得られた[^<18>F]フルオロセレニドは酸化的脱セレネニル化反応による[^<18>F]フルオロアルケンへの変換を検討し、フッ素-18標識薬剤合成法として確立したい。
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