遺伝性高コレステロール血症は、早発性虚血性心疾患の強い遺伝的リスクファクターであり、一般集団中での頻度も高い。コレステロールの代謝調節には、LDLレセプターとそのリガンドであるアポリポタンパクB(アポB)との相互作用が重要な役割を果たしている。本研究では遺伝性高コレステロール血症の原因となっている遺伝子の異常を同定することを目的として、遺伝性高コレステロール血症の42家系のLDLレセプター遺伝子とアポB遺伝子(特にLDLレセプター結合ドメインをコードする領域)の塩基配列を分析した。これまでに分析した家系のうち17家系で、LDLレセプター遺伝子の再配列、フレームシフト変異、複雑な塩基置換、またはミスセンス変異を検出した。また別の16家系ではLDLレセプター遺伝子のRFLPの分析から、LDLレセプター遺伝子の異常が高コレステロール血症の原因になっていると考えて矛盾はなかった。これらの家系では、高コレステロール血症の成人にアキレス腱黄色腫が存在し、血清コレステロール値も300mg/d1以上であることが多かった。残りの9家系は、高コレステロール血症の成人の血清コレステロール値は250〜300mg/d1でアキレス腱黄色腫もなく中等度の遺伝性高コレステロール血症であり、LDLレセプター遺伝子以外の遺伝子の異常が高コレステロール血症の原因と考えられた。この9家系について、アポB遺伝子のVNTRを用いてアポB遺伝子と高コレステロール血症の連鎖を分析したところ3家系においては連鎖がみられたで、発端者のアポB遺伝子のLDLレセプター結合ドメインを含む領域の塩基配列を分析中であるが、現在のところ異常は検出されていない。残りの6家系においては、連鎖は否定されアポB遺伝子も高コレステロール血症の原因手はないと考えられた。本研究の結果、中等度の遺伝子性高コレステロール血症はLDLレセプター遺伝子以外の遺伝子の異常が原因で起こることが示唆されたが、アポB遺伝子の異常との関係についてはさらに研究が必要である。
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