フェノール硫酸転移酵素(PST)はヒトや動物の薬物代謝酵素の一つで、ドパミンやステロイド等内因性基質あるいは薬物の硫酸抱合による解毒に関与するアイソザイムや癌原アミンの活性化に関与する別のアイソザイムがあり、多様な機能を有する多様な分子種から構成されている。本年度、申請者らはPST分子種を認識する抗体および既に単離したラットPSTの一分子種(ST1A1)をコードするcDNA(PST-1)を用いて、ラット肝cDNAライブラリーからPST分子種ST1B1、ST1C1をコードするcDNA(RST-7およびRST-17)、ヒト肝cDNAライブラリーより、ヒトPST分子種ST1A2およびST1A3をコードするcDNA(S-1およびS-2)を単離した。これらを大腸菌やCOS-1細胞で発現させ、これら分子種はすべてPTSの典型的基質であるp-ニトロフェノールに対する硫酸抱合活性を示すことを確認した。フェノール類以外の基質に対しては、ST1B1は甲状腺ホルモンT_3の硫酸抱合能、ST1C1は癌原アミンのN-水酸化体であるN-ヒドロキシ-2-アミノフルオレンの硫酸抱合による代謝活性化能を有しており、ラットPST分子種の多様性が明らかとなった。また、ヒト肝由来ST1A2およびST1A3はフェノール類の硫酸抱合能の他、発毛促進薬であるミノキシジルの活性化、および癌原性アリールアミンやヘテロサイクリックアミンのN-水酸化体の代謝活性化能を有していた。また、ST1A2およびST1A3cDNAの塩基配列は96%の相同性があるが、その中に、約20塩基両遺伝子の塩基配列を区別できる領域があり、その配列をもとに特異的プローブを作製し、ST1A2、ST1A3mRNAの発現を確認した。しかし、そのプローブを用いたゲノムDNAの解析には成功しておらず、今後ゲノムDNAのRFLP解析をしていく予定である。
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