研究概要 |
2種のステロイド6beta-水酸化酵素遺伝子(P450/6betaA,P450/6betaB)の調節領域の塩基配列を解析したところ、転写開始点より上流約200bpまでの領域は、互いの遺伝子間で非常に高い相同性を示した。この領域の塩基配列をさらに詳しく解析したところ肝特異的発現に関与する転写因子であるhepatocyte nuclear factor-4(HNF-4)のコンセンサス配列に類似の配列が、3箇所認められた。これらの3箇所の配列にタンパク因子が、結合することは、ラット肝核抽出液を用いたDNase I footprinting法により確認された。さらに結合するタンパク因子を同定するためにそれぞれの配列のオリゴヌクレオチドを合成し、gel shift法を実施した。HNF-4のコンセンサス配列のオリゴヌクレオチドを用いた競合阻害実験より_-89bpから_-102bpの配列にのみHNF-4およびHNF-4に類似のタンパク因子が結合することが示唆された。次にこれらの配列がP450/6betaA遺伝子の肝特異的発現に関与するのかどうかを明らかにするため、まずBasicCATベクターにさまざまな長さのP450/6betaA遺伝子のプロモーター領域を組み込んだベクターを構築しCATassayを実施した。ヒト肝由来のHepG2cellおよびマウス副腎由来のY1cellを用いたところ、Y1cellはすべてのベクターでほとんど活性の変動は認められなかったが、HepG2 cellを用いた場合_-110bpまでの領域を組み込むことで_-80bpまでの領域を組み込んだベクターに比べ約10倍のCAT活性の上昇が認められた。さらにHNF-4結合領域(_-89bpから_-102bp)の2塩基に変異を導入しタンパク因子の結合を妨げるとCAT活性が低下することも明らかとなった。ヘテロのプロモーターを用いた系においても同様な結果が得られた。以上の結果よりP450/6betaA遺伝子の_-89bpから_-102bpに存在するHNF-4結合配列は、こ遺伝子の肝特異的発現に何らかの役割を果している可能性が示唆された。
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