研究概要 |
我々は健常人84人、インスリン非依存性糖尿病患者で網膜症を合併した患者20人、合併しなかった患者34人についてsuperoxide dismutase(SOD)の活性(NBT法)および蛋白量(ELISAによる抗原量)、ヘモグロビンA1c(HbA1c)について測定し、以下のような結果を得た。SODの活性、蛋白量、比活性はいずれもHbA1cとは有意な相関を示さず、血糖コントロールの指標であるHbA1cとは別の意義を持つ指標であることが示唆された。他方、網膜症合併群では非合併群に比べ、SOD活性と比活性が有意に低く(SOD活性1349+/-59v.s.1419+/-59IU/gHb,SOD比活性5.96+/-1.23v.s.7.49+/-1.38 IU/micro g,p<0.01)、SOD蛋白量とHBA1cは有意に高かった(SOD蛋白量264+/-41v.s.239+/-41、HbA1c 8.22+/-1.59v.s.7.18+/-1.51%,p<0.05)。また、receiver operating characteristic(ROC)curve analysisではSOD活性、比活性は罹病期間に相関すると考えられる年齢、HbA1cより良好に網膜症合併群と非合併群とを区別し得た。SODの活性、比活性はglycationにより低下するために血糖コントロールのmarkerという考えがあったが、以上の我々の結果は、SODの活性、比活性はむしろ網膜症合併のmarkerであり、本症発症予知に有用である可能性を示唆している。また、superoxide radicalおよびその消去酵素であるSODの網膜症発生の病態への関与も示唆するものである。今後、網膜症発生予測へのSODの有用性と本性発生の病態におけるSODの関与を検討するprospective studyが必要と考えられた。
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