研究概要 |
研究は2つの段階で進行した。第1段階は、妊婦に対するインタビューによって、妊婦の胎児への愛着とその形成に関連する要因についての質的な調査であり、第2段階は、第1段階で得られた結果を元にした、妊娠期の妊娠・胎児に関連する妊婦の心理の変化を探る調査で、対象者には、妊娠全期間の妊婦を含め、身体症状の有無との関係を検討した。<第1段階>産科外来通院中の18人の妊婦に妊娠に関連する感情に関してのインタビューを行った。その分析から、妊娠や胎児に関する具体的な言語表現が得られ、また妊婦の胎児に対する感情は、妊娠に関わる感情を含めて分析する必要があることがわかった。<第2段階>妊婦の愛着に関してRubin,Clark,Klaus&Kennel,Cranleyらの研究を含めての文献検討を行った。その結果から、妊婦の胎児への愛着を「妊婦が胎児との関係を形成して行く上で経験する、妊娠及び胎児に対する感情と、胎児との関係形成のために胎児に対して妊婦が起こす行動」と定義し、その下位概念として「母親役割の取得」「献身」「妊娠の受容」「胎児の他者認知」「胎児との相互作用」「胎児の特徴の表現」の6つを定めた。この定義に沿って第1段階のインタビューの結果を整理し58項目の質問紙を作成し、母性看護学専門家及び妊娠経験者11人に対してプレテストを行った。プレテストの結果、不適切あるいは修正が必要と指摘された項目の統合・修正を行い、最終的に26項目になった。この26項目からなる質問紙を本調査として、妊娠全期間の妊婦500人に対して、医療施設5施設の外来にて配布、返送を依頼した。有効回収334、回収率は66.8%であった。対象者の平均年齢28.3才(20-42才)、平均妊娠週数27.8週(6-41週)であった。質問紙の総得点は妊娠週数の経過に従って有意に上昇した。その傾向は、「胎児との相互作用」において最も顕著に認められた。今回は身体症状の有無との有意な関係は認められなかった。
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