本研究は神経難病患者の長期療養施設の需要、必要な機能とマンパワー、地域ケアシステムにおける役割を明らかにするを目的とした。方法:(1)筋萎縮性側策硬化症、脊髄小脳変性症患者など10例の在宅療養経過の分析を行い、施設ニーズの発生する時期および発生要因(条件)の質的分析、(2)平成2年度に実施された東京都の難病患者実態調査結果を再検討し患者集団における施設ニーズに関する量的な分析、を行った。結果:1.長期療養施設の需要は、(1)患者の状態(ア、気管切開、人口呼吸装着など人口呼吸療法、イ、嚥下障害の進行により経管栄養、胃ろう増設など、医療依存度が高い状態のまま安定している時期)、(2)介護者の病気など家族介護力の低下時、に発生していた。上記(1)では在宅療養条件が整備できない場合は医療機関に長期入院する例が多かった。(2)では住宅改造等により対応していたがその後、看護を中心とした施設を希望していた。2.患者の状態と療養場所に関する希望の分析から、(1)医療管理を必要とする状態、及び全面介助を必要とする状態では、自宅療養(33.9〜35.4%)、長期療養施設(28.8〜33.3%)、難病患者のためのホスピス(27.1〜25.4%)、専門病院、訓練施設、老人ホームの順であり、長期療養施設に関するニーズは高かった。これらの結果から長期療養施設対象者は(1)医療依存度は高いが診療内容は定型化している状態の人々、(2)日常生活の援助行為に生命の危険を伴いやすい状態の人々、が予測される。そこで、神経難病患者を対象とする長期療養施設機能としては、診療及び看護を確保しながら患者の生活を保障する施設が必要である。特に医療依存度・介護度が高く日常生活の援助行為にも看護を必要とし、重看護施設となるため看護婦数の確保が課題となる。また、在宅療養患者に対する介護力低下時のショートステイなど地域ケアのバックアップ施設としての役割も必要である。
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