まず、幼稚園における子どもの人間関係とコミュニケーションの関係について検討した。子ども同士の相互作用の中で、特にいざこざに注目してみたところ、その発生頻度が次第に増加していくことがわかった。これは一面で相互作用の活発化を表すものであるが、子ども同士の関係が質的に変化していることを示唆するものでもある。このことは幼稚園において収集した事例の分析によって裏付けられた。子どものいざこざは偶発的なものから、次第に目的をもった意図的なものへと変化しており、それは子ども個人の発達と、子ども同士の人間関係の変化によるものであると考えられた。 次に家庭における子どもの人間関係に注目した。家庭内で起こった子どもの熱傷の事例を集め、その要因の一つとして子どもを中心とする人間関係に注目した。年齢とともに熱傷の発生頻度とその原因は大きく変化しているが、家庭内のコミュニケーションがその発生と予防にかかわっていると思われた。乳児期や幼児前期には、子どものコミュニケーション能力が未発達であるため、大人の予想しない事故が起こる。3歳ごろから、大人が注意を促すことによって事故発生を防ぐことができるようになり、4歳以後は、器具の正しい扱い方を教えることによって、熱傷の発生を防ぐことができると思われた。 子ども集団におけるいざこざと、家庭における熱傷事故の事例を通して、子ども同士、あるいは子どもと大人のコミュニケーションがそうした事態の発生に深く関与していることが明らかとなった。そしてコミュニケーションの発達によって、いざこざや事故の様態がどのように変化するかがわかった。
|