研究概要 |
本研究では,ゴム状であるが光を通すというゲルの興味深い特徴を活かし,外力を加えて変形させるとそれに応じて光学的な性質,特に偏光性が連続的に変化するような材料の開発の可能性を,ゲル調整法の検討,得られたゲルの力学的,光学的性質の測定とそれらの性質間の関係の考察より明らかにしたものである. ジメチルスルホキシド/水混合溶媒にポリビニルアルコール(PVA)を加熱溶解し,-20℃で24時間冷却後,水に置換して,高含水でありながら引張り強度,弾性率ともに優れた透明ゲルを調整した.コンゴ-レッド,ベンゾパ-プリンなどの二色性色素でゲルを染色して色素固定ゲルを調整した.色素固定ゲルの動的粘弾性を測定したところ,固定前に比べて貯蔵弾性率E'は増加し,45℃以上での損失弾性率の上昇は小さくなった.色素分子はPVA鎖を架橋するものと思われる.E'は色素濃度が高くなるにつれて増加するが,高濃度範囲で飽和した.また,PVAと色素の水溶液の紫外可視吸収スペクトルの測定では,共同結合的な挙動が観察された.調整した固定ゲルはいずれの色素を用いたものも延伸によって二色性を示した.二色性比RとオーダーパラメータSが延伸比の増加にともなって増加するという興味深い現象を観察した.色素収着量は,2.5-6.3x10^<-1>mol/g^-gelの範囲が最も高いRとSが得られ,これより高くなると減少した. 以上の知見より,ゲル中の色素は一つの状態でなく,PVAの微結晶近傍にいて強く相互作用しているものや,鎖の構造の乱れた領域に溶解しているものなど多状態で存在していることが示唆される.延伸時にゲルにより高い二色性を持たせるためには,色素を配向度の高い場である微結晶領域近傍のみに多く存在するような工夫が必要と思われる.
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