本研究では、以下に示す3つの実験を行い、被服に吸着させた各種ニオイが生体に与える影響と脱離臭の物理的測定の検討を行った。 実験1:レモン油とラベンダー油、汗臭のイソ吉草酸、および蒸留水を布地に吸着させ、25名の成人女子被験者にそれぞれ呈示して脳波基礎律動の測定を行った。脳波はC3、C4、01、02の4部位により導出した。出力値はFFT解析を行ない、theta波およびalpha波帯域のパワー値について比較した。その結果、イソ吉草酸およびレモン油が被験者の覚醒水準を高めることが示された。またラベンダー油には緊張を抑制する作用があることが示唆されたがその効果に持続性は見られなかった。 実験2:オレンジ油、ローズ油、ラベンダー油、パインニードル、生活臭の、イソ吉草酸、アンモニア、ヘプタノール、トリメチルアミンをそれぞれ布地に吸着させ、同条件で被験者に呈示して環境湿度30、55、80%RHの条件下で、皮膚温、感覚量の測定を行った。平均皮膚温は高湿なほど上昇し、ニオイ呈示後、香料では下降し、生活臭は上昇する傾向が見られた。サーモグラフィーによる手背測定でも同様の傾向が見られた。ニオイ呈示時の不快感は生活臭4種において申告された。なお実験1、2においては本設備備品費で購入したチェアーベットを用い安静椅座位で行った。 実験3測定は出力特性の異なる5個の半導体センサーと設備備品費で購入した超小型湿度センサーを組み込み湿度発生装置を一体型とした装置を試作し行なった。ニオイ試料と環境条件は実験2と同様とした。経時的な出力値をパターン化することにより、試布からの脱離臭の拡散状態が観察され、脱離速度はニオイによって異なることがわかった。また湿度によりニオイの出力値も変化した。 以上の実験から衣服に吸着したニオイは、生体に影響を与え、また周囲環境の影響を受けて変化することが示唆され、本研究はより快適な衣生活環境づくりのために有用であると考える。
|