伝統的な藍染は、発酵建と称し、すくもに含まれるインジゴ分が、発酵によって還元されて染色が行われている。しかし、この古くから行われている藍の発酵建は、藍以外の添加物の力を借りて還元が起こるのはわかっているが、その添加物にもともと還元力があるのか、発酵することによって還元物質が生成するのか、添加物がすくも中の微生物の栄養となりその微生物が還元を行うのか、詳しくはわかっていない。そこで、日本で代表的な添加物であるふすまと、どの様な理由で使用されているか不明だが、西洋で添加物として使用されていたという西洋茜を使用し、藍の発酵建を小規模で実現するとともに、その添加物の効果について調べた。 藍の発酵建は、インジゴの還元体が空気酸化を受けやすいために、小規模では困難とされているが、脱酸素等の厳密な管理を行うことで、極めて小規模の試験管内での発酵建てを実現することができた。添加物として、まずふすまを用いて発酵建てを行ったところ、時間や量の増加と共によく還元された。また、ふすま抽出液を利用して発酵建てを行うこともできた。西洋茜でも同様の傾向が見られた。ふすまは小麦から小麦粉をとったカスで、麦芽にはアミラーゼが含まれている事から、ふすま抽出液中のアミラーゼの有無を調べたところその含有が認められ、アミラーゼがふすま中の多糖類を還元糖分解してインジゴ還元が起こっているのではないかと考察された。
|