研究概要 |
織物の持つデザイン情報を解析する方法の一つとして、コンピュータによる画像処理を応用したシステムの開発を行った。解析は、まず対象となる織物デザインをイメージスキャナで標本化,及び量子化を行い、RGB各256階調のデータとしてデジタル化した。このデータをVisualBasicにより作成した画像処理プログラムを用いて、画像の水平方向に時系列データとして取り分けて行き、個々のデータについてスペクトル解析を施した。一つの画像サンプルのデザイン情報は、この水平方向に求められたパワースペクトルの平均値を結果として求め、様々なデザインによる解析結果の相違について検討を加えた。 織物サンプルは、日本を含めたアジアの代表的な織物デザインである「絣」を中心にし、その他に縞柄などについても解析を行った。その結果、絣のパワースペクトルは低周波から高周波までの各周波数帯での微妙なスペクトルの変化が見られた。また、スペクトルの傾きも1/f^2から1/fに近くなる傾向にあり、自然界の緒現象や形状が持つスペクトルの傾きに近くなっていることがわかった。縞柄などの規則的なデザインは、周波数の細かい変化に対するパワーの変化が見られず、全体に単調な傾向のスペクトルを示した。一部の縞柄デザインは、縞の間隔に対応する形で規則正しい(大きな)スペクトルの凸凹が見られた。今回は、織物デザインの画像処理およびスペクトル解析のシステムを開発することに時間が多く割かれたため、織物のサンプルについては当初計画したものすべての解析・検討を行うことができなかった。今後はさらに多くの織物サンプルについて解析を施し、得られたパワースペクトルの特性別に分類を行うなど、本年(1994年)中に、より詳細な検討を加え、まとめたいと考えている。 デザインの解析と並行して、デザインを見たときの脳波の変化についても検討を行った。その結果、絣や縞柄などのデザインによる若干の脳波の相違が見られたが、単純にデザインだけの要因とは考えづらく、色彩や測定環境によっても大きく影響を受けることが知られた。今後、測定条件を整備して計測を続け、デザイン情報と脳波の相関関係を解析して行く予定である。
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