研究概要 |
本研究は、発汁反応に対する被覆面積・部位の違いを詳細に観察し、その機序を明らかにするために実施した。衣服型の異なるビニール製の上衣・下衣を着用させることにより、被覆面積を同一とし被覆部位を変えた。衣服型は、(A)半袖(前腕部露出、胸・背部被覆)・半ズボン、(B)長袖開襟(前腕部被覆、胸・背部露出)・半ズボンの2条件とし、ショートパンツのみ(C)の条件と比較した。健康な男子学生5名を被験者とし、各条件について3回ずつ繰り返し実験を行った。前腕の局部発汁量を換気カプセル法により連続記録した。体重減少量と滴下汗量を電子台はかりにより測定した。鼓膜温、食道温と11ケ所の皮膚温をサーミスタ温度計により測定した。被験者は、前室で温度センサーと発汁カプセルを装着した後、32℃,40%rhの人工気候室に入居して椅座位安静を保った。15〜20分後に実験着を着用させ、40分後に室温を2℃上昇させた。その後、30分毎に室温を40℃まで2℃ずつ上昇させた。個人差はあったが、平均体温(温度入力の指標)に対する局所発汁量は、A,BともCよりも有意に多くなった。平均体温に対する汗の拍出(発汁波)頻度(中枢性発汗活動の指標)は、BではCと有意な差がなかったが、Aは有意に勾配が増加した。一方、発汗波頻度に対する局所発汗量はAではCと有意な差はなかったが、BはCに対して有意に勾配が増加した。以上から、皮膚を被覆することにより、発汗量が増加することが明らかとなった。その機序については、発汗中枢機構の感度の増加と汗腺における発汗神経活動に対する感受性の高進が考えられる。その直接要因について、発汗漸減現象も考慮して検討する。
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