最近、キノコ類の人工栽培が盛んになり、市販キノコの種類が豊富になってきた。しかし、キノコ類の有力なうま味成分であるヌクレオチド類は、加熱調理過程において生成・分解すると考えられるにもかかわらず、シイタケの場合を除いてそれらの知見は極めて乏しい。そこで、本研究では市販キノコ類について、加熱調理過程における核酸・ヌクレオチド類の挙動について検討した。試料の市販キノコ類は購入後、直ちに2倍量の水を添加し、未加熱・一定昇温加熱・熱水加熱・電子レンジ加熱を行い、加熱後冷却し、過塩素酸を加えホモジナイズし、ヌクレオチド類を抽出した。核酸関連物質の分析は、Shim-pack WAX-1を用いる高速液体クロマトグラフィーによった。また、各ヌクレオチド類の確認はホスファターゼおよび5'-ヌクレオチターゼを用いて行った。その分析結果はつぎのようにまとめられる。 1.マッシュルーム、マイタケおよびブナシメジでは、加熱調理過程中に5'-アデニル酸が増加したが、その他のヌクレオチドはほとんど増加傾向を示さなかった。この加熱による5'-アデニル酸の増加は主としてATPの分解に由来した。 2.アワビタケ、マツタケ、ヒラタケでは、シイタケと同様に、加熱調理過程中に5'-グアニル酸および5'-アデニル酸が生成した。また、エノキタケおよびナメコはマッシュルームのグループとアワビタケのグループの中間に位置する傾向を示し、これらの加熱による5'-アデニル酸の増加はATPとリボ核酸の分解に由来し、5'-グアニル酸の増加はリボ核酸の分解に由来した。
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