温浴の効果は、日常生活では疲労を取り除いたり心身をリラックスすることとされている。また、最近の研究では運動後の回復を早めるために温浴が奨励されている。さらに、高血圧や糖尿病の治療を行う方法の一つとして温浴が行われている。そこで、本研究では、一般的な運動として行われる等尺性運動を温浴中に行わせ血圧の変化を陸上での変化と比較することを目的とした。被検者は、健常成人男性5名で、特殊なトレーニングを行っていない人とした。血圧の測定は、上腕部にて測定した。等尺性の運動は、温浴を行わなければならないので大腿筋の等尺性運動とした。まず、陸上において座位で膝関節90度における等尺性の膝伸展運動を行わせ、その際の最大筋力を測定し、20〜40%MVCにあたる張力を発揮し、その際の血圧を記録した。また、筋力発揮中の筋電図を、大腿の主動筋より導出した。次に、温浴時の実験は、水温が体温に近い35度になるように設定した。これは、水温が血圧に影響をおこさない温度であるためです。等尺性の運動は、陸上での測定と同じような手順で行った。 結果、血圧において、最高血圧は、温浴時および陸上時において差は見られなかったが、最小血圧では温浴時が低かった。心拍数は、温浴中が陸上に比べ低かった。筋電図の変化は、温浴時のほうが陸上よりも筋放電が高く見られた。筋収縮持続時間は温浴時の方が長かった。 以上のことより、等尺性の運動時においては、心拍数の血圧の関係からみて温浴時の方が陸上時よりも心臓脈官系にかかる負担が少ないことが明らかになった。これは、末梢循環抵抗が温浴により低下しているためであろうと考えられる。筋電図において温浴時が筋放電は高かった。このことは、大きな運動単位が温浴時に働くものと考えられる。今後、温浴時における異なる運動のタイプからの研究が必要と考えられる。
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