肥大筋におけるタンパク質合成能と骨格筋の可塑性との関係を明らかにするため、研究実施計画に基づいた系統的な実験を実施した。本研究はその手始めとして、腱切除後の回復過程における骨格筋サイズの経日的変化をしらべた。その結果、以下のような知見を得た。 1.腱切除による肥大筋の作成とその検討: SD系雄性ラット(10週齢)を用い、左後肢の腓腹筋の腱を切除することによって代償性の筋肥大をヒラメ筋と足底筋に惹起させた。対照は反対足(右後肢)の同名筋とした。以上の方法により、筋肥大の程度が腱切除後の日数(5日、10日、14日)によってどのように変化するかを検討した。 腓腹筋の腱を切除した足底筋の湿重量は5日目で2%、10日目で7%対照筋に比べて大きかった。ヒラメ筋では、対照筋に比べて5日目で16%、14日目で4%大きかった。また、切除された腓腹筋は、10日目で3%、14日目で5%対照筋に比べて小さかった。これらの結果は従来の報告と定性的に一致するが、その肥大や萎縮の程度は僅少であった。また、左右後肢の長指伸の湿重量は経日的に増加し、左右差は認められなかった。 2.肥大筋内の核酸およびタンパク質レベルの検討: 上記の方法で得られた肥大筋のDNA、RNAおよびタンパク質の絶対量は、対照との間に有意な差が認められなかった。 以上の結果より、ヒラメ筋と足底筋を肥大させる日数、ラットの週齢および手術後の回復と筋の容量との関係をさらに検討する必要性が認められた。
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