1.目的:運動の動作のイメージだけではなく、球技におけるボールの軌跡に関するイメージの正確性を、熟練者と未熟練者で比較することによって、より深く運動イメージの正確性を検討することを目的とした。 2.方法:1)被験者:女子大学生15名(バスケット経験者5名;B群、バレーボール経験者5名;V群、陸上競技経験者5名;T群)。2)実験課題:バスケットボールのフリースローショット。3)実験手順:被験者は、フリースローのイメージを描き、イメージの時間的側面として、ボールを構えた状態から離れるまでの「シュート動作時間」と、離れてからゴールに到達するまでの「ボールの滞空時間」を測定した。次に、イメージでのボールの軌跡を所定の記録用紙に記入した後、実際のシュートを目隠しの状態で5回実施する。シュートはビデオに記録し、デジタイズによってその軌跡を抽出して、イメージでの軌跡との「ずれ」を面積によって算出するとともに、実際の時間を測定した。これらの側面の正確性を熟練者と未熟練者で比較した。 3.結果:3群を比較した結果、軌跡および時間の正確性について、有意な差は認められず、軌跡については放物線よりも低く、時間については実際よりも長くなり、3群とも正確なイメージを描いているとは言えなかった。従って、ボールの軌跡の正確性に関して、熟練者と未熟練者の間に差はないと考えられる。しかし、イメージやフォームの安定度、また、実際のパフォーマンスは熟練者の方が優れた結果を示していた。これらのことから、熟練者はイメージがパフォーマンスとズレを持ったまま内的に結び付き、固定されていると考えられ、そのイメージを基にして優れたパフォーマンスを示し、未熟練者は不安定で間違ったイメージを持ち、そのイメージに従って運動を実施しようとしているために、パフォーマンスが劣っていたと考えられる。
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