心形態・機能の運動に対する適応と病的な適応についてMRIを用いて比較検討した。被検者はスポーツ心臓群、病的心臓群、対照群とし、容量負荷型スポーツ心臓の代表として競技ランナー(S-V:5名)、圧負荷型として重量挙げ選手(S-P:5名)、また、容量負荷型心疾患の代表として拡張型心筋症患者(DCM:5名)、圧負荷型心疾患として肥大型心筋症患者(HCM:5名)、および対照群として一般健康成人(C:5名)を用いた。General Electric社製 核磁気共鳴断層撮影装置を用い、各心周期で必要なMRI画像を撮影し、コンピュータ処理を行った。得られた画像より最大拡張末期径(Dd)、最大収縮末期径(Ds)、左室後壁厚(LVPWT)、心室中隔壁厚(IVST)などの形態的情報や、左室拡張末期容量(LVEDV)、左室収縮末期容量(LVESV)、一回拍出量(SV)、左室内径短縮率(FS)、壁応力(R/Th)などの機能的指標を求めた。主な結果としてS-V群ではR/Thは正常範囲内であったが、FSは有意に減少していた(p<0.05)。DCM患者ではR/Thは有意に増大(p<0.01)し、FSは有意に減少していた(p<0.01)。S-P群ではFSは正常範囲内であったが、R/Thは有意に減少していた(p<0.01)。HCM患者ではFSは正常範囲内であったが、R/Thは有意に減少していた(p<0.01)。以上のことより、安静時ではS-V群とDCM群、S-P群とHCM群とが似通った形態・機能を示しており、心筋に対する負荷条件の違いによって適応状況も異なることが示唆された。しかしながら、運動時における心機能の適応については不明な点が多く今後の検討が必要であろう。
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