研究概要 |
本研究では,サッカー競技場面におけるシュート方向の予測の速さと正確さが,身体言語的手掛かりの処理を促進すると考えられる文脈的手掛かりに影響されているかどうかを検討した. [方法]1)被験者 大学サッカー選手22名(平均競技年数;87年).2)課題 サッカー状況において,2(攻撃側)対1(守備側)の対戦状況を撮影したものを,攻撃開始時からシュートインパクト時(約3秒間)までに編集したものを18場面を刺激とした.被験者にはモニターに映された刺激場面を見て,シュート方向を速く正確に判断させた.反応時間は,刺激場面に1kHzの純音を挿入し,反応時間装置と連結させて作動させ,被験者が押すボタンにて停止させて測定した.正確さは方向(右,左)正誤とした. 3.文脈的手掛かりの測定 シュート方向の予測にどのような文脈的手掛かりを利用したかを,選手の位置や選手とラストパスとの位置的,時間的関係などの5項目について,とても利用した(5)から全く利用しなかった(1)までで各刺激場面ごとに評定させた. [結果]1.刺激状況の分類 文脈的手掛かりの利用度の観点から,クラスター分析(WARD法)により刺激状況を分類した結果,5タイプ(AタイプからEタイプ)に分類された. 2.各タイプ状況ごとの予測の速さと正確さの分析 予測では,タイプの違いによって有意な差がみられなかった.正確さでは,タイプC(シュート体勢への入り方が他の4項目よりも利用得点が高い)が81.8%と他のタイプよりも有意に正確であった.次に,正答時のみの反応時間について分析した結果,タイプ状況によって反応時間が異なる傾向が確認された.結果から,文脈的手掛かりは予測の速さと正確さが影響を及ぼしていることが確認されたと言える.
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