研究概要 |
本研究の目的は、局所的な筋力・筋持久力トレーニングが、筋化学受容器による血圧調節に影響を及ぼすかを検討することである。そのために、10人の男子被験者に対して、左右両腕でのハンドグリップ運動をNMR装置内で行わせ、収縮直前より活動筋の上腕を止血して、その止血期間の血圧及び筋内のpHを測定した。収縮の強度は最大筋力の50%として、収縮時間は15,30,45,60秒とした。それぞれの被験者の利き腕と非利き腕について、筋内化学受容器の入力刺激としてpHの変化をとり、それに対する出力として平均血圧の変化を対応させて、筋内化学受容器反射の特性を求めた。得られた主な結果は次のとおりである. 1.まず化学受容器の特性に関しては、従来は入力刺激に対して直線的に出力が増加すると考えられたが、今回の結果から筋内pHが7.2から6.9まではpHが減少しても血圧が増加しないこと、それ以下のpHではpHの低下と血圧増加が比例関係にあることが示され、筋内化学受容器反射が作動閾値を持つことが明らかとなった。 2.利き腕と非利き腕とを比較した場合に、利き腕の方が非利き腕に比べてpH-血圧の関係が右側にシフトしており、このことは日常的な低強度の運動トレーニングによって、筋内化学受容器反射の特性が変化することを示唆すると考えられる。 1.及び2.の内容に関しては1993年日本体力医学会において報告した。1.の内容については、Acta Physiologica Scandinavicaにおいて今年度掲載予定である。2.の内容については、投稿準備中である。 今後はこの結果をふまえて、どのような局所トレーニングが筋内化学受容器反射を変化させるかを明らかにするために、同一被験者におけるトレーニング(縦断的トレーニング)を用いた研究が必要と考えており、平成6年度の科学研究の研究計画書に記載した。
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