研究概要 |
近年、スポーツ経営の分野、特に民間スポーツクラブ経営において「消費者満足(Consumer satisfaction)」や「顧客満足(Customer satisfaction)」といった言葉や考え方が注目されるようになり、実際にそれを経営の中に導入しようとしているスポーツクラブも増加してきている。しかしながら、このような顧客満足の創造にマジメント哲学を置いたクラブ数の増加にも関わらず、クラブの利用後に期待はずれの失望感を経験している会員-不満足な消費者-の数も少なくないと思われる。この不満足は、消費者のロイヤルティ(Loyalty)や口コミ(Word-of-mouth communication)に多大な影響を及ぼし、消費者の態度変容をも導くため、経営者は常に消費者不満足に注目し、それを消費者苦情として顕在化させ、クラブのマーケティング・プログラムの修正へと結び付けていくべきである。そこで今年度は、民間スポーツクラブの経営に焦点を当て、クラブ利用後の消費者満足・不満足の構造と、消費者不満足の結果から起こる会員の苦情行動(Complaint behavior)について把握することを目的として、文献収集・レビューを中心に研究を進めてきた。 その結果、マーケティング理論や消費者行動研究に関する文献収集・レビューから、(1)会員の満足・不満足の構造がCardozo,R.N.(1965)やSuprenant,C.(1976)らの「期待・パフォーマンス(単純バランス)仮説」で説明することができ、また(2)会員の苦情行動モデルが消費者苦情行動の経済学的モデルを提示したHirschman,A.O.(1970)の"Exit-Voice(離脱-苦情)"理論や、Gronhaug(1977)の概念的プロセス・モデル、そしてDay and Landon(1977)の購買後行動モデルを用いることによって構築することができる。ということが示唆された。今後、ここで構築された会員の苦情行動モデルから、いくつかの仮説が演繹され、それらが実証的に検証されていくことが望まれる。
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