一流バドミントン選手のジャンピング・スマッシュ動作を16mm高速度カメラを用いて撮影し、3次元的映像分析を行い、肩、上腕および肘などの運動を定量的に解析した。インパクトにおける手の位置は、最高点より6.7±0.4cm低いところにあった。肘はある程度の屈曲角度を保ちながらインパクトを迎え、インパクトにおける肘の平均屈曲角度は160.0±4.6度であった。インパクトに向かう上腕の動作は、肩の水平位内転、肩の外転、肩の内旋及び肘関節の伸展などによって構成されている。インパクト直前に急激に行う肩の内旋と肘の伸展動作が認められ、その二つの関節運動は、スマッシュ動作における主な動作だと考えられる。インパクトに向かう上腕の運動は、二つの運動に構成されていると考えられる。一つは肘が伸展しながら上腕が肩を回転中心にする後ろから前への運動、もう一つは、肘が屈曲したままでの肩の内旋による前腕の運動である。スマッシュ動作は、「できるだけ肘を伸ばすこと」と「できるだけ肘を曲げること」という、相反する課題を同時的に果たさなければならない運動の過程になる。このような相矛盾する二つの課題からなるスマッシュの理想モデルは、絶対的に一つのモデルとして設定されるものでなく、両モデルの寄与し合う割合が、その両極の間に、無限の組み合わせとして存在すると推測できる。本研究で算出した肘の160.0度のインパクト角度は、選手らが実践に応じて、パワーと打点の間に極めて選択した合理的な数値だと考えられる。
|