研究概要 |
若年期および中高年期での中強度の運動が,中高年期での心筋ミオシンアイソザイムパターン,収縮特性および不整脈の発生に及ぼす影響について検討した. 40匹のラットを以下の5群に分けた.C30および38群:30週齢および38週齢まで安静状態で飼育した群.DT群:4〜12週齢までトレーニング(25m/min,1hr.,5day/week)を負荷し,以後30週齢まで安静飼育した群.RT群:DT群と同様の条件で飼育後,31〜38週齢まで再びトレーニング(20m/min,1hr.,5day/week)を負荷した群.OT:若年期においては運動を行わず,31〜38週齢でトレーニング(20m/min,1hr.,5day/week)を負荷した群.各条件で飼育後,心室筋よりアクトミオシンを抽出し,電気泳動を行い,各ミオシンタイプの割合を算出した.また,右室乳頭筋を用いて,tyrode's液下およびbetaリセプター刺激下で等尺性最大収縮力等を計測した.さらに,心電図を導出し,自律神経系の活動変化も観察した. C30群に比較して,DT群のV_1ミオシンの割合は有意に高かった.収縮特性に関しては,両群間で有意な差はなかった.C38群,RT群およびOT群の3群間で,各ミオシンタイプの割合に有意な差は認められなかった.しかし,RT群は他の2群に比較してV_1ミオシンが多い傾向を示した.収縮特性については,3群間で有意な差は認められなかった.OT群でbetaリセプター刺激下で2Hzの電気刺激を加えたとき半数の筋標本で期外収縮が観察された. 以上の結果から,中高年期でのトレーニングはミオシンのタイプ変化を引き起こし得ないと考えた.一方,若年期でのトレーニングはV_1ミオシンを保持させる効果があり,しかもその効果はトレーニングを中止しても存続し,トレーニングを再開した場合に運動負荷に対して有利に働くことが示唆された.期外収縮はミオシンタイプと直接的に関連しなかったが,筋小胞体等の機能変化によるCa^<2+>の動態が原因していると推測した.
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