研究概要 |
ギプス固定よる筋萎縮ならびに筋機能低下を軽減させることを目的にギプス固定前に異なる様式の運動を負荷し、機能的、組織化学的指標から運動の効果を調べた。実験にはICR系雄マウスを用いた。運動は持久的走運動(分速20m,角度5度),水泳(水温35度Cで遊泳),アイソメトリック運動(体重の10%の重りをつけた状態で金網の垂直面を維持、1セット5分×12セット)でいずれも1日60分週5日、10週間行った。トレーニング終了時、足底筋、ヒラメ筋とも体重あたりの相対重量は対照に比べ高く、疲労耐性に優れていた。その後のギプス固定により筋重量、最大筋力及び疲労耐性の低下が観察されたが、その低下率は固定前に運動を負荷していないギプス固定群に比べ低く、絶対値でも固定前に運動を負荷したギプス固定群の方が高値を示した。ギプス固定によりヒラメ筋では単収縮の時間経過の延長が、足底筋では短縮が見られ、遅筋と速筋で異なる変化が見られた。これらの収縮速度に関する機能の変化はギプス固定前に運動を負荷することにより小さくなった。組織化学的には両筋において相対的に速筋化が見られた。筋損傷の程度はギプス固定前に運動を負荷したことにより若干の軽減が認められた。したがってヒラメ筋に筋損傷が顕著であったことはギプス固定によるヒラメ筋の単収縮の遅延と速筋化という相反する変化の部分的な説明として考えられた。運動様式の違いから運動の効果を比較すると水泳運動に比べ走運動やアイソメトリック運動の方がギプス固定に伴う筋萎縮や筋機能の変化ならびに筋損傷の出現を少なくさせた。以上の結果から、運動はギプス固定による筋の萎縮や機能変化を軽減させることが示唆された。このことは脱ギプス固定後の生理的な筋の重量並びに機能の回復を早めることと推察される。
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