本研究は、ぼふ、シルム、沖縄相撲の運動技術と文化構造を比較検討することが目的であった。比較の結果、以下のような知見が得られた。 1.運動技術 運動技術に関しては、投げ技が主体となっているという点において、共通性が見られるものの、個々の技術については、特に共通性を見出すことはできなっかった。また、韓国のシルムと沖縄相撲(シマ)には、技術的には共通点はほとんど存在せず、これまで指摘されてきた、両者の関係は、少なくとも技術的には全く異なる運動形態であることが明らかとなった。 2.文化構造 三者のすべての文化構造について比較することは、時間的にも不可能であることから、ここでは運動技術と関る文化の構造のみを対象とした。中国モンゴル族のボフは、中国国家の少数民族のエスニシテイと関係する側面が強かった。これに対して韓国のシルムは、伝統文化の側面は確かに持ち合わせてるが、無形文化財に指定されなかったことなどの理由からプロ・スポーツ化が進んだ。また、沖縄相撲は琉球文化と関りを持っていたようであるが、現在では大和相撲(日本相撲協会に代表される相撲を指す)との併存は文化的な違いから苦慮するという問題も潜んでいる。三者の共通点としては、これらのが、技術よりも力技を重んじる運動であり、力に対しての崇拝という側面において文化的な共通性が指摘できる。
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