「目的」運動トレーニング時には老化赤血球の溶血が促進し、赤血球の寿命は短くなるが、その反面、代謝活性能力の高い若年赤血球が多くなることが予測される。しかしこれまでに、この点を検討した研究は行われていない。そこで本研究ではinvivoで赤血球を放射性標識したラットに持久的運動トレーニング(回転ゲージによる自発的走運動)を負荷し、この時の標識赤血球の血中消失速度および平均赤血球比重を非運動ラットと比較し、持久的運動トレーニングが赤血球の細胞年齢に及ぼす影響について検討した。 [方法]赤血球の放射性標識:ラット(ウイスター系雄、10週令)に370kBqの14C^<>標識放射性グリシンを腹膣内投与し、in vivoで赤血球のヘモグロビンを放射性標識した。運動負荷:赤血球ヘモグロビンを放射性標識したラットを無作意に運動群と非運動に分け、運動群はラットが自発的に運動ができる回転ホイールが付いたゲージで1匹づつ飼育し、非運動群は数匹づつ通常の飼育ゲージにて飼育した。標識赤血球の血中消失速度の測定:各群のラットとも、放射性グリシン投与の2日後より2または3日毎に尾静脈より20mulづつ採血し、この血液を自動サンプルオキシダイザーにて燃焼させ14C^<>を14C^<>O_2として回収し、これを液体シンチレーションカウンターにて測定し、血中14C^<>放射活性を測定した。平均赤血球比重の測定:放射性グリシン投与60日後に尾静脈より採血して得た赤血球を、Percollの連続密度勾配溶液を用いて、赤血球の比重に従って密度1.020-1.180g/mlの範囲で分画した。各分画中のヘモグロビン量を測定して、全分画の総ヘモグロビン量に対する比を計算し、各分画中に含まれる赤血球の割合を求めた。これを基に平均赤血球比重を計算した。 [結果・考察]今回測定したラットの赤血球寿命は運動群で58日、非運動群で66日であった。これらの値は先行研究での約60日という報告値とほぼ等しい値であった。しかし、赤血球の老年期(40日目以降)における血中放射活性の減少が運動群の方が著しく、運動群での加齢赤血球の急激な消失が推測された。また、平均赤血球比重は運動群で1.106g/ml、非運動群でで1.110g/mlと運動群が低い傾向を示した。これらの結果より、今回実施した自発的走運動の様な非常に軽い運動でも、老化赤血球の消失を促進させ、赤血球全体としては赤血球の若年化をもたらすことが示唆された。
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