SARDの移管をめぐる政策的特徴とは何か。第1に、「スポーツマッチ」(Sportsmatch)という考えを打ち出したことである。特に青少年、少数民族、身体障害者、都市及び農村の利便性の低い地域において、企業によるスポーツ支援を導入しようとした。第2に、スポーツカウンシルの再編合理化である。これは、イギリススポーツカウンシル(GB Sports Council)に代えて、イングランドスポーツカウンシルと「スポーツ委員会」(UK Sports Commision)を設置し、後者が国内的にも国外的にも唯一な正式機関とするものであった。第3に、地方行政機関に対して、民間部門(private sector)と共同でスポーツ施設の設置に当たらせ、さらに、地方行政機関が設置したスポーツ・レジャー施設の管理運営の効率性を高めるために競合性を導入するというものであった。そして、第4に、「サッカー観戦に関する許可機関」(Football licensing Authority)やスポーツ競技場の安全のための権限がDNHに移管されたことが挙げられる。 このうち、(2)スポーツカウンシルの再編合理化と、(4)のスポーツ競技場の安全については、「国民文化財産の機能移管に関する枢密院令」におけるスポーツ行政に関わる規定との関連性を指摘できる。また、(3)スポーツ施設の管理・運営をめぐる競合性の導入、については1988年の「地方政府に関する法律」(Local Government Act 1988)の適用がなされている。 結局は、スポーツ政策の表明・実施が法令に先行して形成されるということが、移管をめぐる中心的な問題として指摘できる。
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