本研究は、聴覚障害学生を対象に、リズム感とボディコントロールに着目した、リズムエクササイズプログラムを試作し検討することを目的とした。 一回60分程度のリズムエクササイズプログラムを作成し、期間中毎週1回全15回実施した。評価の指標にはビデオ分析、心拍数(HR)、POMSを用いた。 運動とリズムの同期を客観的に評価するためにビデオ分析を行った。その結果、運動持続時間が長くなるほどリズムとのずれがみられる傾向があったが、エクササイズの回数が進むにしたがい、運動とリズムの同期がみられるものが増加した。これは聴覚障害学生にとって聴覚情報の欠如だけでなくパーソナルなリズム感が十分形成されていないという側面と、パーソナルなリズム感はトレーニングによってある程度改善できる可能性を示唆するものである。したがって、リズミカルな動きや安定したボディバランスの獲得は、聴覚障害者にとって重要な課題であると思われる。リズムエクササイズ中の心拍数(HR)からみた運動強度は、エクササイズの回転が進むに従って、ターゲットHRに達しており、エクササイズとしては有効であると思われた。またPOMSを用い運動前後の気分の変化を調べ、運動とリズムとの関連を検討したが、抽象的な表現が多く、聴覚障害者にはあまり適さないことがうかがえた。 聴覚障害者にリズム感を育成するための効果的な運動プログラムについて検討した結果、リズムエクササイズに対する学生の興味と関心は高いことがわかり、今後は、対象年齢を広げるなどさまざまな角度からのアプローチを行い、運動プログラムを検討していきたい。
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