研究概要 |
高所馴化ラットにおいて,運動時の肺循環動態について検討した.安静時の肺動脈圧は,明らかに高所馴化群で高値を示した.しかし,運動による肺動脈圧の上昇は,平地馴化群と高所馴化群ではほぼ同程度であり,安静時の肺動脈圧の高い分がそのまま平行移動した.運動による体血圧は,平地馴化群ではほとんど変化がなかったが,高所馴化群では上昇を示した.また,安静時の心拍数は有意に高所馴化群で低いが,運動による心拍数の増加分は,有意に高所馴化群が大きかった.HbおよびHtcは高所馴化群が有意に高く,運動時の動脈血酸素飽和度は高所馴化群で低かった.つまり,高所馴化において,安静および運動時の肺高血圧は,HbやHtcの上昇および血液ガス酸素分圧の低下が一部関与すると思われる.この結果については,94年日本体力医学会で発表するとともに,Adsvances in Exercise and Sports Physiologyに投稿する.高所馴化群は,顕著な右心室肥大が認められた.つまり,肺毛細血管にも肥厚が生じていることが予想され,現在分析中である.また,馴化する高度の違いによる運動時の肺循環動態についても検討中である.以上のことから,高所馴化のみによる運動時の肺循環動態は,悪影響を及ぼす結果がほとんどであり,唯一Htcの増加が運動能力に好結果をもたらすだけであった.今後は,高所馴化の期間,標高,運動トレーニングとの組み合わせ等,多方面からの高所トレーニングの意義について検討しなければならないと考える.
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