研究概要 |
本研究は,都市内人口移動の空間的パターンを提示し,それらのパターンがいかに形成されるかを解明することを目的とした。本研究では,これらの移動パターンの形成機構を,主として,都市内人口密度ならびにその密度勾配との関係に着目することによって議論することとした。 都市内部の人口移動と人口密度との関係については,著者が既に学位論文において数理モデルとして提示している。したがって,本研究は上記モデルの統計的検証を行うための研究として位置づけられる。この数理モデルは,都市内部のある地点を通過する人口流動を密度勾配によって説明する形態をとり,次式で表される。すなわち,都心から距離rの地点を通過する人口流動量をf(r),その地点の密度勾配を∂d/∂rとしたときに,f(r)=2pir(a∂d/∂r+bd+c)となる。ただし,a,b,cはパラメータである。 このモデルの検証は,郡山市の1980,1985年国勢調査小字・番地別データ,および1987年10月〜1988年9月の1年間における転出・転入・転居届けの個票(50%抽出)を用いて行った。検証方法は,まずモデル式の両辺を-2pirで割った式を差分方程式に変換しa,b,cをパラメータとする重回帰方程式を導出した。次に,1980,1985年の国勢調査データのそれぞれについて密度勾配の差分値を算出した。そして最後に,個票データより人口流動量f(r)を算出し重回帰分析を行った。 こうした重回帰分析の結果得られた決定係数は良好な値であり,都市内部の人口流動が人口密度と密度勾配の1次結合式として表されることが統計的に検証された。すなわち,ある段階における都市内人口移動の空間的パターンは,その前段階における人口密度の形態にかなり依存して形成されることが示唆される。
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