兵庫県内において、ダム建設による入会林野の水没に伴い、入会林野を売却する際、その売却収益をどのように処分するかを、村落社会構造等と関連づけて、考察した。 具体的には、ダム建設にともない水没した入会林野の権利者団体代表者に、アンケート調査・聴き取り調査を行うとともに、権利者に対するアンケート調査でこれを補完する方法を取った。 調査協力を得られた入会団体についての分析結果では、売却収益は、すべからく入会団体全体の基金として貯蓄されている。このように、入会林野の売却収益が、基金として蓄積された背景には、 1)いずれの場合においても、入会林野が全て水没せず、共有財産である土地が存続しているため、旧来の共有財産を保持しようとした 2)いずれの団体の母体となっている村落社会においても、共同作業など旧来からの村落社会における規制が、変質せずに存続し、住民もこれを遵守しており、村落社会の結合度がきわめて高い 3)そのため、村落社会のリーダー層を中心とする村落社会の運営が強い結合のもとに行われている ことが考えられる。
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