本研究では、顕熱輸送に対する粗度長を草地面を対象にして詳細な微気象観測によって決定し、同時にもとめる草丈、葉面積指数などの植生情報と合わせることで、そのパラメタリゼーションを行なった。必要なデータは、筑波大水理実験センター熱収支観測圃場において、牧草の成長に合わせた観測を春から秋にかけて行内、観測項目として熱収支項(正味放射、地中熱流量、顕熱、潜熱)、地表面温度、温度および風速の鉛直プロファイル、葉面積指数を求めた。 得られたデータより、各季節毎に顕熱に対する粗度長を決定し、それが何により決められているかを探るために、日射量、太陽高度、草丈、葉面積指数、日射量に対する直達日射量の比、風速などを対象に重回帰分析を行なった。その結果、日射量、葉面積指数、晴れ指数、日射量に対する直達日射量の比を加えた重回帰式で相関係数0.75で粗度長の推定が行なわれることが分かった。さらに、この様にして得た粗度長と、地表面温度、気温、風速のデータから顕熱フラックスの値を求め、実測値と比較すると相関係数0.90以上で一致することが分かった。さらに、熱収支式を利用して求めた蒸発量は実測値と比較して0.97という高い相関係数で一致することが確かめられた。したがって、ある地表面を対象にして顕熱に対する粗度長がパラメタライズできれば、衛星から得られる地表面温度と衛星または地上からの観測によって得られる大気中の温度、風速から高い精度で地表面熱収支項の推定が行ない得ることが分かった。
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