研究概要 |
1.日降水量分布の推移をもとにして高橋(1989)が示した中国大陸上の降水帯形成の3類型について,1977〜1981年6,7月における全降水量に対して類型毎の降水量が占める割合(%)の分布を求めた.その結果,各類型の多降水域を中心に全降水量に対して各類型の降水量が20〜40%を占める地域が認められ,中国大陸上の北緯30度をはさんだ領域では全降水量のうち50%以上が3類型の降水によって占められている.それぞれの類型が最も卓越した月を抽出し,その月の降水量分布図と比較すると,月降水量分布は月間に卓越する日降水分布型とよく対応しており,降水分布と降水をもたらす降水システムとの関係を捉えやすい日降水量分布に基礎をおいて降水量の年々変動を解析することの妥当性が示唆された. 2.同種の降水システムであっても,その通過によってもたらされる降水量や降水の継続時間には事例毎に差異が認められる.そこで日本付近における降水の継続性について水蒸気輸送などの総観場の解析を行った.西南日本における領域平均日降水量の時系列をみると,一定量以上の多降水の出現日には4日以上継続する場合と1〜2日で終了する場合が認められた.それぞれの場合について850hPa面における水蒸気量分布および水蒸気輸送量の合成図を作成した結果,多降水が継続する場合には,短期間で終了する場合に比べて水蒸気量・水蒸気輸送量とも日本南岸で大きくなっていることがわかった.これは前者の場合において,日本南方における高気圧性循環(亜熱帯高気圧)ならびに中国南部における低気圧性循環が強いためで,南西諸島付近における南風が強化・維持され,持続的に多量の水蒸気が日本付近に供給されることにより多降水が継続したと考えられる.
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