1975年のアビ改革では、自分の回りのテクノロジー的環境を理解させ、その結果将来の実生活や職業訓練の準備をさせる、という目的で「手工技術教育」(EMT:Education manuel et tecknique)が導入され、家庭科的内容としては、第三学年に(1)住居と生活、(2)被服、第四学年で(1)生活衛生と食物を配置し、いずれも製作や実習などを主たる内容としていた。それに対して1985年のシュベヌマン改革では、教科:テクノロジー(Technologie)が新設され、コレージュ第一から第二学年までは「家事や手職といったタイプの作業の占める割合を減少させることが、学習指導要領において指摘され、第三から第四学年においては、アビ改革時のEMTの家庭科的内容は廃止された。その理由は、アビ改革における主婦準備としての職業指導的なEMT教育が、結果的にシュベヌマン改革の目的である現代社会の科学・技術の要請に対応できるテクノロジー教育という視点には合致しなかったからである。以上から、フランスの家庭科教育の科学化の過程では、家事技能習得的教育内容が衰退することになった。今後は、生活技術に関する科学を教育内容とし、科学的概念の習得を中心とした知(識教)育instructionや科目教育enseignementの「科学の論理」からの構想と展開が必要になろう。
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