研究概要 |
本研究では、第一に,小学校から大学生までの各学校段階の児童・生徒,総計898名を対象とする質問紙調査,およびその一部の中学生を対象とする面接調査を行った.これらの調査によって,児童・生徒がもつ算数・数学観,算数・数学の授業観など「信念システム」の一端とその学習に対する影響が明らかになった.たとえば,「数学とは与えられた規則の実行である」といった認識をもつ児童・生徒が見いだされ,このような認識は彼らの思考の「硬直性」の一因となっていることが指摘された.このような認識は,児童・生徒が教師の意図とは別に学んできた側面(「隠れたカリキュラム」)の顕在化したものと考え,その起源を調べるために以下のような授業観察を行った. 東京都内の公立小学校の算数授業を対象とする参与観察のデータを約6ヶ月間にわたり収集し,その分析を行った.VTRによる授業の記録と授業プロトコール,観察者によるフィールドノート等から,実際の教授・学習過程において「隠れたカリキュラム」がどのように現れているのかを総合的に分析した.この分析によって,たとえば,教師の意図する授業の流れの「定型化」が,教師の意図とは別に児童の行動を「制御」する事例が特定された.このように,本研究では,教師が暗黙のうちに前提としている算数観や授業観が児童の学習に影響する側面を指摘した. 以上の研究成果の一部を,日本・中国・米国の3ヶ国による数学教育合同会議(中国・上海)において発表した.
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