これまでの放送・ビデオ教材の時代に比べ、近年のマルチメディアやハイビジョンのような新技術の発達により、教育における映像の役割は、さらに重要になってきている。また、ビデオカメラなどの映像機器が安価になり教育現場へ急速に普及し、映像の専門家でない教師でも容易に教材作成が可能になっている。しかし、一般に“良い"と評価される映像は、ハード面ではなくディレクター、カメラマンなどによるソフト面での経験的技術的な専門知識によるところが大きい。その経験的な知識・技法を明らかにすることをめざし、本研究では、映像教材の画像と音響情報の構成要素とその構造の分析法を検討した。さらに、その成果を用いて映像教材の情報量の尺度化の方法も検討した。 三尾は、ビデオに記録した映像の構造分析支援ツール(探索的ビデオ分析システム)を既に開発しており、これを構造カテゴリーの記録とその分析用のツールを新たに開発した。かつ、ユーザーインターフェイスの開発が容易なOSをもつノートパソコンを購入してプログラムを移植した。 1.構成カテゴリーの開発:形態の特徴の代表的なビデオ教材の画像と音響情報それぞれについて情報源となりうる構成要素を抽出し、カテゴリーとして分類した。 2.映像の情報量の尺度化:三尾は、映像の「メディア複雑性」という概念を考案しており、情報の複雑性について理論的検討を進めた。 3.映像教材の構造の視覚化の方法の開発:映像の構造を効果的・視覚的に表現する方法を工夫して、構造カテゴリーとメディア複雑性の時間推移をグラフ化した。 4.ビデオカラー印刷装置を用いて24枚の画像を同時にシートに印刷する多画像同時印刷とその画像の等時間間隔サンプリングによって構造カテゴリーの測定が容易になった。また、メディア複雑性と実際の画像との比較ができその妥当性の検討ができるようにした。 5.画像と違い、音響は視覚化できない。これはDAT(デジタルオ-ディオテープ)を用いることで測定誤差がなくなり、逐語記録の作成に有効な手段であることがわかった。 以上の結果、映像の画像と音響情報の構造分析のための測定法と分析ツールが開発できた。
|