本研究の実績は、国外の健康教育におけるロール・プレイ手法の分析、日本へのロール・プレイ手法導入の可能性の検討、ロール・プレイ手法を用いた保健教育の試行とその評価の3つに分けて考えることが出来る。 国外の健康教育におけるロール・プレイ手法の分析に関しては、主として、米国健康財団が開発した包括的健康教育プログラム「KNOW YOUR BODY」の教材、教師用マニュアルを分析した。その結果、ロール・プレイ手法は、周囲の人々の影響力が好ましくない方向に作用する可能性が高い場面において、それに対抗し、保健的な行動を実現するような技術を習得させるために用いられていることが明らかになった。また、教師用マニュアルを分析することにより、ロール・プレイを授業で実施する際のいくつかの教育的な技術に関しても整理できた。 日本へのロール・プレイ手法導入の可能性の検討に関しては、何人かの現職の教師に調査を行った結果、日本人と米国人とでは国民性が異なり、ロール・プレイ手法を日本において行うことは必ずしも容易ではないが、事前指導やロール・プレイ中の教師の指示などを充実させることにより、十分可能であり、効果をあげ得るという見通しが得られた。 ロール・プレイ手法を用いた保健教育の試行とその評価に関しては、現職の教師と共に、HIV感染に関する保健教育の案を作成し、実際に小学校において実施してみた。ビデオによる授業記録の分析、児童の感想文の分析等により、講義形式の授業と比較して、児童の態度面、行動への意志面での授業効果が大きいという結果が得られた。
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