本研究の対象児童は重症心身障害児のなかでも、比較的知能障害の軽度なもので潜在的コミュニケーション能力が高いと認められる児童1名(7歳3か月)である。本児に対しては、まず運動機能障害の様相やコミュニケーション欲求、手段とその内容について多角的に検討した。その結果、コミュニケーションのために使用可能な随意運動としては右上肢の親指と小指であることがわかった。また、これらの指の可動範囲は座位をとった本児の右体側のかなり狭い領域に限定されていること、さらにその姿勢では視線が左上方向に向きやすいことが明らかになった。そこで、本児の見やすい位置にモニターを設置するとともに、親指と小指で操作可能なスティック状の補助入力装置を試作した。学習課題としては本児の好きなくだものの絵のペインティング学習を取り入れた。その結果、従来では課題設定が困難であった麻痺の強い児童もうまく絵を描くことが可能になった。
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