田口玄一氏が提唱されたタグチメソッドは、工業における統計的実験計画法のひとつの発展形態と考えられる。しかしその方法論は伝統的な実験計画法とは異なる観点から説明されてきた。本研究ではタグチメソッドのいくつかの手法を取り上げて、それらの統計数理的モデル化を行い、それらの性質を明らかにするとともに改善すべきいくつかの点を示すことができた。具体的には以下の4項目を挙げることができる。 1.タグチメソッドの計画段階で重要な役割を果す混合系直交配列表の性質を明らかにした。筆者は過去にL18直交配列表の性質について調べているが、今年度はそれよりも大きいL36直交配列表についての成果を得た。 2.品質特性のトレードオフ関係を改善する手法である機能窓法の解析方法としてロジスティック回帰モデルに基づく方法を提案した。さらに、従来計数特性のみに用いられてきた機能窓法を計量特性にも拡張し、実験の計画段階における能動的信号因子の適応的外側割付けという一般化された手法を導いた。 3.タグチメソッドの中心であるSN比解析の中で静特性のSN比に対して、交互作用解析の観点から位置づけ、その合理的適用範囲を明らかにした。 4.動特性のSN比として最近用いられている比例式に対する新たな変動の分解を導いた。これについては今後も研究を継続する計画である。
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