研究概要 |
リボソーム蛋白質を対象とした分子進化学的解析の基礎資料を得ることを目的として研究を行なった。国際的な遺伝情報データベースに登録されている約1,000種のリボソーム蛋白質一次構造データの全てに対し、各種相同性解析のアルゴリズムを適用して、これらを大腸菌の54蛋白質に相同と考えられる54個のファミリー、および、大腸菌には相同なものが存在しないと考えられる45個のファミリー、にそれぞれ分類した。さらに、アミノ酸の物理化学的性質から推定される高次構造の類似度を指標として相同蛋白質同士の相似度マトリクスを構成し、これらをもとに全てのファミリーに関するアライメントを構築した。その結果、以下に示すことが明らかとなった。(1)三大生物群を通して存在が認められるファミリーが少なからざる数にのぼる、(2)多くのアライメントは、挿入、欠失、分子伸長等の変化を生じているものの、分子のN末端からC末端にかけてほぼ一対一対応のパターンを示す、しかし、分子内転座(大腸菌L7/L12相当)、二分子融合(L10相当)などの大きな変異も稀に見受けられる、(3)大幅な挿入、欠失、分子伸長などの変化は、三大生物群同士の間で見いだされる、逆に、同一群の中では、アミノ酸置換が主たる変異の要因となっている。 一方、各ファミリーの中で、比較的データ数が多いものに関して、系統関係の推定、アミノ酸置換速度の推定などの分子系統学的解析を行ない、いくつかの新しい知見を得た。
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